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岡山地方裁判所 平成9年(ワ)858号 判決 1998年6月08日

原告

松岡ひとみ

被告

山西聡子

主文

一  被告は、原告に対し、金一一五万八九三五円及びこれに対する平成九年三月二一日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用はこれを一〇分し、その三を原告の負担とし、その余は被告の負担とする。

三  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告に対し、金一六一万二三三八円及びこれに対する平成九年三月二一日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  主文第一項につき仮執行宣言。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告と被告との間において、左記交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。

(一) 日時 平成九年三月二一日午前八時四〇分ころ

(二) 場所 岡山市庭瀬二三番一先市道上

(三) 事故態様 原告運転の自家用軽四輪乗用車(岡山五〇ま一一八七。以下「原告車両」という。)が、T字型交差点(以下「本件交差点」という。)を徐行中、被告運転の自家用軽四輪乗用車(岡山五〇ぬ七二四五。以下「被告車両」という。)と衝突した。

2  被告は、本件事故当時被告車両を運転していたものであるが、本件事故現場交差点において、直線路を直進中の車両の有無に留意し、その安全を確認しながら進行すべき注意義務を負うにもかかわらず、これを怠り、漫然と直線路に進入し、右方から徐行してきた原告車両に衝突させたことにより、不法行為に基づく責任を負うとともに、被告は被告車両を保有し、自己のために運行の用に供していたから、自動車損害賠償保障法三条の責任を負う。

3  本件事故によって、原告は、左記の損害を被った。

(一) 修理費 金八万五九九五円

(二) 代車料 金一万四七〇〇円

(三) 文書料 金七〇〇〇円(診断書・通院証明書)

(四) 治療費 金六万八八三二円

(五) 通院慰謝料 金六〇万円

原告は、本件事故により、腰部打撲の傷害を負い、次のとおり通院治療をした。

(1) 平成九年三月二二日 うちおグリーンクリニック

(2) 同年三月二五日から同年四月七日(通院実日数一二日) はやし接骨院

(3) 同年四月八日から同年六月九日(通院実日数四二日)有森医院

(六) 休業損害 金六八万四九二七円

月額二五万七二〇〇円(平成四年度賃金センサスに基づく年齢別平均給与額。原告は本件事故時二七歳(昭和四五年四月七日生))×一二×三六五分の八一(休業期間(平成九年三月二一日から同年六月九日))=六八万四九二七円

(七) 通院交通費(ガソリン代) 金一万九七一六円

(八) 通院交通費(バス代) 金一万〇七五〇円

(九) 弁護士費用 金二〇万円

4  よって、原告は、被告に対し、不法行為及び自動車損害賠償保障法三条に基づく損害賠償請求として、右損害金一六九万一九二〇円の内金一六一万二三三八円及びこれに対する本件不法行為の日である平成九年三月二一日から完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1のうち、原告車両が徐行していた点を否認し、その余は認める。

2  同2は認める。

3(一)  同3(一)は認める。

(二)  同(二)、(三)は知らない。

(三)  同(四)、(五)は否認する。

(四)  同(六)ないし(八)は知らない。

(五)  同(九)は否認する。

三  抗弁(過失相殺)

本件事故現場は、ほぼ同幅員の道路が交わるT字路であり、原告は、左方道路から進入してくる被告車両があることを予想し得たのであるから、右道路からの車両の有無動静に注意を払い、適切な衝突回避の方策を採るべき義務があったにもかかわらず、原告はこれを見落とし、原告車両を漫然と進行させ、または、被告車両の進入は見落とさず認識していたものの、原告車の適切な速度調整等の衝突回避の方策を採らなかったことにより、右義務に違反した過失があり、原告には本件事故について、少なくとも三割の過失がある。

四  抗弁に対する認否

否認する。

第三証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録のとおりであるから、これらの各記載を引用する。

理由

一  請求原因1の事実は、原告車両が徐行していた点を除き、当事者間に争いがなく、原告車両が徐行していた事実は、証拠(甲一八、二八、原告本人)により認められる。

二  請求原因2は当事者間に争いがない。

三  請求原因3について検討する。

1  同(一)は当事者間に争いがない。

2  同(二)(三)は証拠(甲二ないし四)により認められる。

3  同(四)は証拠(甲九、原告本人)により認められる。

4  同(五)については、証拠(甲五、六、原告本人)によれば、原告は、本件事故により腰部打撲の傷害を負い、本件事故の日の翌日(平成九年三月二二日)から同年六月九日までの間に、うちおグリーンクリニックに一日、はやし接骨院に一二日間、医療法人有森医院(以下「有森医院」という。)に四二日間通院した事実が認められ、これらの事実及び本件に顕れた諸般の事情を考慮すれば、通院慰謝料としては金四五万円が相当である。

5  同(六)については、証拠(甲五、六、九、一八、原告本人、弁論の全趣旨)によれば、原告が本件事故により腰部打撲の傷害を負い、事故の日から平成九年六月九日まで通院を要したこと、有森医院に通院中の同年四月一〇日ころには右傷害が治癒し、その後同年六月九日まで右医院で保存的治療が行われたこと、原告は、本件事故当時二六歳であり、夫と別居中で無職(求職中)であったことがそれぞれ認められ、これらの事実によれば、二六歳女性の平均月額給与の七割を基礎に、原告の右通院期間中の休業損害を認めるのが相当である(二二万三一〇〇円×〇・七÷三〇×八一=四二万一六五八円)。

よって、休業損害としては金四二万一六五八円が認められる。

6  同(七)については、証拠(甲一〇、一九ないし二七)によれば、平成九年三月三一日から同年五月三〇日の間に原告がガソリン代として一万九七一六円を費やしたことが認められるが、平成九年三月二二日から同年四月七日までは、うちおグリーンクリニック及び林整骨院にバスで通院しており、右期間も有森医院への通院中とほぼ同様のガソリン費消がされていることからすると、主として通院以外の日常生活において自家用車が使用されたものと推認でき、通院交通費としてのガソリン代が特段必要になったような事情は認められない。その他ガソリン代が本件事故の損害として認められる証拠はみあたらないから、請求原因(七)は認められない。

7  同(八)は証拠(甲一〇、原告本人)により認められる。

8  同(九)の弁護士費用としては、弁論の全趣旨によれば、金一〇万円が相当である。

9  以上により、原告は、本件事故により、合計一一五万八九三五円の損害を受けたと認められる。

四  抗弁について

証拠(甲七、八、一一ないし一八、二八、乙一、二の一ないし五、原告本人、被告本人)によれば、本件事故態様は、車両を運転しながら本件交差点を直進していた原告が、被告車両を確認し、被告車両が速度を落として停止しようとしたことを認めたため、徐行しながらそのまま直進を続けたところ、被告が、右方向の確認を怠り、原告車両が直進していたのに気付かずに、本件交差点の左折を開始したため、被告車両の前方を通過していた原告車両の左後方側面部分に、被告車両の右前方バンパー部分が衝突したというものである。右事故態様からすると、本件事故は、本件交差点での出会い頭の事故とはいえないし、原告は十分注意を払いながら運転していたにもかかわらず、被告の一方的な不注意によって事故が生じたと認められる。

被告は、原告が被告車両が右折車であったと陳述した点をとらえて、原告は、被告車両の進入を見落としたと主張するが、前掲各証拠によれば、本件交差点付近において原告が被告車両の進入を確認していたことは間違いなく認められ、原告の右陳述部分は記憶の誤りによるものと推認でき、必ずしも被告の主張を裏付けるものではない。また、原告が原告車両を徐行直進させながら、被告車両の状況を確認し、本件交差点をそのまま直進できると判断して徐行を続け、被告車両の前方を、原告車両がその車体の半ば過ぎ付近まで進行したところで、前記衝突が発生したものであって、被告が主張する適切な速度調整も十分尽くされていたものと認められる。その他本件全証拠によっても、原告の過失を基礎付ける事実は何ら認められない。

よって、原告に過失はないから、抗弁は認められない。

五  結論

以上の事実によれば、原告の請求は、不法行為及び自動車損害賠償保障法三条に基づく損害賠償請求として金一一五万八九三五円及びこれに対する本件事故発生の日である平成九年三月二一日から完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法六一条、六四条を、仮執行の宣言について同法二五九条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 小森田恵樹)

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